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「先輩? いいよ、いつがいい?」
「おいっ!」と、名達が止めようとする。
『結城さんはいつでもいいって……』
「名達、今夜暇だよな?」と、スマホを耳に当てたままで聞いた。
「暇だけど……。お前、何勝手に――」
「――今夜七時に金曜の店でいい?」
俺は名達の話も聞かずに、約束をした。
『うん、わかった……』
「先輩も行こ」
『え……?』
「いきなり二人で会うより良くない? それに、金曜は食事もしないで帰っちゃったし」
俺の下心が読めたのか、名達と影井は呆れ顔をしている。
『でも……』
「二人の気が合えば、俺たちは先に帰ればいいよ」
『う……ん』
「じゃあ、七時にね」
やった! 一週間たたずに先輩に会える!
場所が違えば、飛び上がりたいほど嬉しかった。
「俺をダシに使いやがって……。随分嬉しそうだな」と、名達が冷ややかな目で俺を見ていた。
「ここ、奢れよ」
「ホント、相変わらずの無表情だけど、すげー喜んでるのはわかるわ」と、影井が笑った。
「ついでに俺もご馳走様です!」
「なんでだよ!」
三人分の蕎麦代も、午後の仕事も苦にならなかった。
ただ、ひたすらに七時が待ち遠しかった。
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