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2.変化
「葉山さん、ありがとうございます!」
約束を取り付けて電話を切った私に、結城さんは言った。
「でも……、私まで……」
まさか、私と紫苑まで同席することになるとは思わなかった。
付き合っていた頃から強引なところがあったけど、変わっていなかった。
「良かったです。いきなり二人きりじゃ緊張しちゃうし……。先輩の彼も気を使ってくれたんですよね?」
「あ……彼氏じゃ……」
「私、仕事に戻ります。残業にならないようにしなきゃ! 帰りに来ますから、待っててくださいね!」
結城さんは慌ただしく自分のフロアに戻って行った。
一週間……経ってないのに……。
紫苑との再会は驚いたけど、嬉しかった。
この四年、紫苑のことを忘れたことはなかった。
彼と付き合っていた時も――――。
紫苑の雰囲気が変わっていたことには、戸惑った。付き合っていた頃は、よく笑う子だった。私が笑っていたからかもしれない。紫苑といると、温かくて、楽しくて、嬉しくて、自然と笑顔になれた。紫苑も、笑顔を見せてくれていた。
再会した紫苑は、笑わなくなっていた。二十歳の紫苑とは別人のように、大人の男になっていた。
髪型は変わってなかったな……。
紫苑のサラサラの髪は、くせっ毛の私には羨ましくて、彼の髪を指で梳くのが好きだった。
「幕田さんていうんだけど、合コンお持ち帰り率百パーセントなんだって」と、合コンの前に後輩が話しているのを聞いた。苗字が違っていたから、まさか紫苑だとは思わなかった。
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