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私はモニターで紫苑の姿を確認して、エントランスへのドアのロックを解除した。
モニターから紫苑の姿が消えると同時に、人影が写った気がした。見覚えのある横顔。
まさか――!
私は裸足のままで部屋を飛び出していた。
二階を通過したばかりのエレベーターが五階に到着するまで、私は息をするのを忘れていた。
紫苑、早く来て――!
祈るように、いや、祈っていた。
エレベーターの前で、祈るように両手の指を組んで、鼻先に押し付けていた。
紫苑――――!
「朱音? どうした?」
頭に響く鼓動が大きすぎて、エレベーターが到着していたことに気が付かなかった私は、紫苑の声にハッとして顔を上げた。
扉が開くと同時に現れた必死の形相の私に、紫苑もまた驚いている。
「紫苑……」
エレベーターに乗っていたのは紫苑一人だった。
「ひと……り……?」
乗客を降ろした鉄の箱は、一階に帰って行く。
「朱音、顔真っ青だぞ? 裸足だし……」
「紫苑……」
ホッとした瞬間、腰が抜けた私はその場に座り込んでしまった。
「どうした? 具合悪いのか?」
私は紫苑の無事を確かめようと、彼の腕にしがみつく。
温かい……。
「大丈夫か?」
紫苑に抱きかかえられて、私は部屋に戻った。
「風呂は?」
紫苑は私をバスルームに連れて行って、足を洗ってくれた。その間も、私は彼の首にしがみついたままだった。
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