4.彼の傷

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 私はモニターで紫苑の姿を確認して、エントランスへのドアのロックを解除した。  モニターから紫苑の姿が消えると同時に、人影が写った気がした。見覚えのある横顔。  まさか――!  私は裸足のままで部屋を飛び出していた。  二階を通過したばかりのエレベーターが五階に到着するまで、私は息をするのを忘れていた。  紫苑、早く来て――!  祈るように、いや、祈っていた。  エレベーターの前で、祈るように両手の指を組んで、鼻先に押し付けていた。  紫苑――――! 「朱音? どうした?」  頭に響く鼓動が大きすぎて、エレベーターが到着していたことに気が付かなかった私は、紫苑の声にハッとして顔を上げた。  扉が開くと同時に現れた必死の形相の私に、紫苑もまた驚いている。 「紫苑……」  エレベーターに乗っていたのは紫苑一人だった。 「ひと……り……?」  乗客を降ろした鉄の箱は、一階に帰って行く。 「朱音、顔真っ青だぞ? 裸足だし……」 「紫苑……」  ホッとした瞬間、腰が抜けた私はその場に座り込んでしまった。 「どうした? 具合悪いのか?」  私は紫苑の無事を確かめようと、彼の腕にしがみつく。  温かい……。 「大丈夫か?」  紫苑に抱きかかえられて、私は部屋に戻った。 「風呂は?」  紫苑は私をバスルームに連れて行って、足を洗ってくれた。その間も、私は彼の首にしがみついたままだった。
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