1.再会

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「わかったよ……。ところで、影井」 「ん?」 「デートの前に歯を磨けよ?」 「へ?」  俺が箸で生姜焼きを指さすと、影井が「あっ!」と声を上げた。 「早く言えよ!」 「お前のデートの予定なんて知らねーもん」 「今日は内勤だからと思って……。くっそ」 「そこのコンビニで歯ブラシ買ってけ」 「そうするわ」  影井はそう言って大口を開けて笑った。  影井、嬉しそうだな……。  俺も一度やったことがある。  先輩と待ち合わせの前に定食屋で生姜焼きを食べた。食べてから四時間は経っていたのに、キスの後で先輩に笑われた。 『紫苑、生姜焼きの味がする』  俺は素直に謝った。  そしたら、彼女は『生姜焼き、食べたくなっちゃった』と言って、また笑った。 「幕田、今笑ってる?」 「へ?」 「いや……。なんとなく、笑ってるように見えたから」 『幕田は笑わないんじゃないんだな』と影井に言われたことがある。 「ちょっと懐かしいこと思い出してた」 「そっか……」と言って最後の生姜焼きを頬張った影井は、やっぱり嬉しそうだった。
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