4.彼の傷

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「そんなにいいものじゃないよ?」 「え?」 「私と紫苑は――」  バッグの中でスマホが震えていることに気がついた。紫苑からのメッセージ。 「名達さんが結城さんと仲直りしたいって。どうする?」  私と結城さんは、紫苑たちがいる店に向かった。  私は彼女を送ったら帰ろうと思っていたけれど、結城さんと名達さんが席を移して話をすると言うから、私は紫苑の隣に座った。 「会えて嬉しいです」と、影井さんはほろ酔いで言った。  影井さんはお姉さんとは似ていなかった。 「結城さん、怒ってた?」 「ううん。不安だったみたい……」 「そうか」 「やっぱり嫌なものですか? 元カノとの思い出を持ってるのって」と、影井さんが聞いた。 「こいつ……同じ理由で最近別れたんだって」 「あら」 「すげー好きだった元カノから貰ったもの捨てろって言われて……」  影井さんは肩を落としてビールを飲む。 「捨てられなかったんだ……?」 「はい……」  紫苑が取り皿と箸を私の前に置く。 「今は?」 「え?」 「それが原因で彼女と別れて……それでも捨てられない?」 「はい……」 「じゃあ……、影井さんは元カノのことがまだ好きなんですね」  話を終えた結城さんと名達さんが戻って来た。  店員が奥の個室が空いたからと、席を移してくれた。 「名達は……思い出を捨てるのか?」
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