4625人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんなにいいものじゃないよ?」
「え?」
「私と紫苑は――」
バッグの中でスマホが震えていることに気がついた。紫苑からのメッセージ。
「名達さんが結城さんと仲直りしたいって。どうする?」
私と結城さんは、紫苑たちがいる店に向かった。
私は彼女を送ったら帰ろうと思っていたけれど、結城さんと名達さんが席を移して話をすると言うから、私は紫苑の隣に座った。
「会えて嬉しいです」と、影井さんはほろ酔いで言った。
影井さんはお姉さんとは似ていなかった。
「結城さん、怒ってた?」
「ううん。不安だったみたい……」
「そうか」
「やっぱり嫌なものですか? 元カノとの思い出を持ってるのって」と、影井さんが聞いた。
「こいつ……同じ理由で最近別れたんだって」
「あら」
「すげー好きだった元カノから貰ったもの捨てろって言われて……」
影井さんは肩を落としてビールを飲む。
「捨てられなかったんだ……?」
「はい……」
紫苑が取り皿と箸を私の前に置く。
「今は?」
「え?」
「それが原因で彼女と別れて……それでも捨てられない?」
「はい……」
「じゃあ……、影井さんは元カノのことがまだ好きなんですね」
話を終えた結城さんと名達さんが戻って来た。
店員が奥の個室が空いたからと、席を移してくれた。
「名達は……思い出を捨てるのか?」
最初のコメントを投稿しよう!