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「私たち……一緒にいないと生きられないの……?」
私の部屋に帰ると、紫苑は私を抱きすくめた。焦るように服のボタンに手を掛ける。
「生きられないよ……」
耳元で紫苑の息遣いを感じて、身体が熱くなる。
「お母さんが生きていても……?」
紫苑が私の肩を掴んで、身体を引き離した。
「何で……母さん?」
「いつも……うなされてる」
アルコールでほんのり赤くなっていた紫苑の頬が、血の気を失っていく。
「夢を……見るのは私のせい?」
「違う!」
「一人の夜も……?」
紫苑は苦しそうに眉間に皺を寄せて、頷いた。
「朱音と一緒の時はよく眠れるから、夢を見ていても覚えてない……けど……」
「薬……いつから飲んでるの……?」
私は紫苑のネクタイに手を伸ばした。
「知って――」
先週、紫苑の家に泊まった時に、ごみ箱に薬の袋を見た。ネットで調べたら、重度の不眠症患者に処方される睡眠導入剤だった。
「――母さんが死んでから……」
四年間も眠れずにいたの――?
「私と一緒だと……眠れる?」
紫苑が頷く。
「そっか……」
私は紫苑のネクタイを外して、ワイシャツのボタンに手を掛けた。
「じゃあ……ずっと一緒に寝ようか……」
「え……?」
一週間前に紫苑の左胸に付けた印は、消えていた。私は先週と同じ場所に唇を押し付けた。
「そしたら……印が消えることもないよね?」
「いいの……?」
私は紫苑の下唇を舐めて、軽く噛んだ。
「だって……一緒にいないと生きられないから」
紫苑が私をきつく抱き締めた。
私も小さく震える彼の肩を抱き締めた。
「朱音……。俺を許して――」
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