4.彼の傷

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***** 「私たち……一緒にいないと生きられないの……?」  私の部屋に帰ると、紫苑は私を抱きすくめた。焦るように服のボタンに手を掛ける。 「生きられないよ……」  耳元で紫苑の息遣いを感じて、身体が熱くなる。 「お母さんが生きていても……?」  紫苑が私の肩を掴んで、身体を引き離した。 「何で……母さん?」 「いつも……うなされてる」  アルコールでほんのり赤くなっていた紫苑の頬が、血の気を失っていく。 「夢を……見るのは私のせい?」 「違う!」 「一人の夜も……?」  紫苑は苦しそうに眉間に皺を寄せて、頷いた。 「朱音と一緒の時はよく眠れるから、夢を見ていても覚えてない……けど……」 「薬……いつから飲んでるの……?」  私は紫苑のネクタイに手を伸ばした。 「知って――」  先週、紫苑の家に泊まった時に、ごみ箱に薬の袋を見た。ネットで調べたら、重度の不眠症患者に処方される睡眠導入剤だった。 「――母さんが死んでから……」  四年間も眠れずにいたの――? 「私と一緒だと……眠れる?」  紫苑が頷く。 「そっか……」  私は紫苑のネクタイを外して、ワイシャツのボタンに手を掛けた。 「じゃあ……ずっと一緒に寝ようか……」 「え……?」  一週間前に紫苑の左胸に付けた印は、消えていた。私は先週と同じ場所に唇を押し付けた。 「そしたら……印が消えることもないよね?」 「いいの……?」  私は紫苑の下唇を舐めて、軽く噛んだ。 「だって……一緒にいないと生きられないから」  紫苑が私をきつく抱き締めた。  私も小さく震える彼の肩を抱き締めた。 「朱音……。俺を許して――」
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