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子供の頃から俺のことは母さんに任せっきりで、たまに顔を合わせても成績のことや交友関係について小言を言うだけだった父さんに、初めて殴られた。
その時、朱音に会いに行くことを決めた。
決めたのに、行方が分からなくて、挫けて、気を紛らわすために名前も知らない女を抱いた。
父さんへの反抗だったのかもしれないな――。
「……」
気がつくと、俺は朱音の腕の中で眠っていた。
話の途中で激しい頭痛と寒気、息苦しさに襲われ、俺は子供のように朱音に縋りついて泣いた。
情けねー……。
白とグレーのストライプのカーテンが朝日を浴びて、真っ白に見えた。
今日が日曜日で良かった……。
鏡を見なくても自分の顔がどうなっているか想像できた。瞼が重くて、目を開けるとヒリヒリ痛んだ。
朱音は眠る時、ブラジャーをつけない。顔に押し付けられた彼女の胸の柔らかさと、規則正しく聞こえる鼓動に、身体が熱くなる。朝の生理現象に輪をかけて、下半身が疼く。
母さんのことも父さんのことも、どうでもいい。
今、目の前に朱音がいて、彼女は温かい。
それだけで充分だった。
俺は朱音の腕から這い出て、圧し掛かった。ほんの少しの唇の隙間から舌を押し込むと、彼女は目を覚ました。
「ん――っ」
起き抜けの彼女の甘い喘ぎに、下半身が更に膨張する。
「し……お――」
俺と朱音の舌が絡み合う音が部屋に響く。緩く結んだ彼女の髪の輪ゴムを外し、髪を指に絡ませる。細くて柔らかい朱音の髪を触るのが好きだ。
「紫苑……どうし――」
俺が身体を押し付けると、朱音はそれ以上何も言わなかった。
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