5.温もり

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 木のぬくもりが感じられるログハウスのような内装のカフェには、女性客が三組いた。俺たちは日当たりのいい窓際の席に座り、コーヒーとカフェモカを注文した。外からでは見えなかったけれど、店の奥は手作り雑貨の販売もしていて、朱音は俺を置いて席を立った。  俺は他の客が美味しいと悲鳴のような声を上げて、満面の笑みで頬張っているのを見て、同じものを注文した。  三段のパンケーキの上に、たっぷりの生クリームとこぼれ落ちるほどの生フルーツ。  朱音を呼びに行くと、彼女は何かを熱心に見つめていた。俺に気がつくと、彼女はさっと席に戻った。 「これ……」  パンケーキを見た朱音がグーッと腹を鳴らしたが、俺は気付かない振りをした。 「昔は好きだったけど、今はもう好きじゃない?」 「そんな……ことないけど……」 「せっかく頼んだんだから、食べてよ」  朱音は口元を緩ませながら、それでも仕方なさそうにパンケーキにナイフを入れた。生クリームと小さくカットされたイチゴとブルーベリーがのったパンケーキを口に入れると、期待した通りの表情を見せてくれた。  目を細め、頬を膨らませて、忙しく口を動かす。 「おいしーーー!」  幸せそうにパンケーキを口に運ぶ朱音を見ているだけで、涙が出るほど嬉しくなった。  癖になりそうだ……。  俺はだらしのないにやけ顔を誤魔化すように、コーヒーを飲んだ。 「紫苑」  呼ばれて顔を上げると、目の前にパンケーキが迫っていて、俺は思わず口を開けてしまった。 「あっま!」  ブラックコーヒーを飲んだ後だから、その甘さは予想以上だった。 「協力してよ。全部一人で食べたら太っちゃう」  朱音は俺の反応を見て、楽しんでいた。  カフェにいたのは一時間ほどで、俺たちはさらに探索を続けた。  カフェから五分ほど歩くと、本屋があった。レンタルショップも併設されている。三十分ほど店内を見て回り、二軒隣のパン屋で明日の朝食用のパンを買い、さらに二軒隣の総菜屋で夕食用の総菜を買った。朱音は帰って食事の用意をすると言ったけれど、さっきのパンケーキで朱音の腹が満たされていることはわかっていた。  俺たちは手をつないで家に帰った。  ずっとこうして朱音と手をつないで生きていきたいと、思った。
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