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「あなたと紫苑が結婚すれば、私たちは義理の母子になるのよ? 今から仲良く出来たら――」
「――仮に私と紫苑が結婚するとして、その時まであなたとご主人は夫婦でいるでしょうか?」
「え……?」
「うまくいってないんでしょう?」
店員が飲み物を運んできた。夕飯時で、店内が賑わってきた。
「どうして……そんな……」
背後で聞こえる叔母さんの声は、明らかに動揺していた。
通路を挟んで隣の席の小さな子供が、身を屈める俺たちを指さし、母親がその指を軽く叩いた。
「紫苑のお母さんが亡くなって四年以上になります。誤解を解くにしても、話し合うにしても充分な時間だったと思います。けれど、あなたとご主人は紫苑を一人にした。今更、心配だの和解したいだの、本心とは思えません」
「そんな――」
「――それでもあなたが私と紫苑のことを調べて会いに来たのは、ご主人が私と会ったと知ったからでしょう? 偶然にしてはタイミングが良過ぎますから」
「私は本当に――」
「――二人の関係が良好なうちは紫苑のことは気にも留めなかったのでしょう? でも、気持ちに変化があって、ご主人は紫苑に会いに来た。焦ったんじゃないですか? だから、紫苑と和解できればご主人の気持ちを繋ぎ止めておけると考えた」
「朱音さん……すげぇな」と、名達が呟いた。
「朱音を本気で怒らせたら……こんなもんじゃ済まないんだよ……」と言いながら、俺はため息をついた。
「格好いいです、葉山さん」と、結城さんがうっとりと言った。
俺と名達は顔を見合わせる。
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