第2章 空中飛行

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「フッ、ありがとう。そうだね。『天翔ける銀の月(あまかけるぎんのつき)』。この鎌の名前だ」 「名前もきれい」 「だね」ユーディは満足そうに微笑んだ。  うわー。今のユーディ、たまらなく素敵ー。  フェリスは思わず鼻を鳴らした。 「けど、鎌で脅しただけで逃げてったってすごいです」 「『天翔ける銀の月(あまかけるぎんのつき)』もユーディもこっちでは有名だから。特にあーゆー下層のやつらの間では広まってるんじゃない?昔、あれで、刈り取られたってやつも多いだろうし」フェリスが横から口をはさんだ。  そうなんだ…有名なんだ…「だったら、この鎌、貸してください」プリエはすぐそこにあるユーディの赤を秘めた青い目を見た。  ユーディもフェリスもあからさまにぎょっとした顔をした。 「もし、あいつらが来たら、この鎌で脅して、ダメならザクッってしちゃえば良いんですよね?」 「貸すわけにはいかない。この鎌は私のパートナーだから」ユーディが苦笑しながら言った。 「そもそも、ユーディにしか扱えないから」フェリスは呆れた顔をしている。「特別な鎌なんだよ。最下層のものたちをザクザク刈り取っているから、刈り取りの鎌って呼ばれてるけど、鎌の刃先に触れたものを本来あるべき場所に移す。そういう力のある鎌なんだ」 「移す?鎌で刈られて死ぬわけじゃないんだ?」 「あー、こっちではあっちの世界で言う”死”ってのはないから。そもそも肉体がないのに、どうやって死ぬんだよ」  ん?なんか言い方がちょっと腹立つけど、そう言われたらそっか。「本来あるべき場所?って?」プリエはフェリスをチラっと見た。 「こっちは階層世界っていうかね、境界線があるとか、上下ってわけじゃないんだけど、同じような人たちが近い場所で暮らしてる。自然と引き寄せられてそうなる。それがその人のあるべき場所。大抵の人は本来あるべき場所で普通に暮らしてるんだけど。悪いヤツ…レベル低い奴らの中には、まれに、違う場所にうまく紛れ込んだりしてるのがいるらしい。そーゆー奴らを刈り取るための特別な鎌」 「んー、不法侵入者を強制送還させる?みたいな?」 「あ、そうそう、そんなイメージ。さっきのあのグレーのだって、無理やりこじ開けてあがってきてたんだから、鎌で刈り取られたら一瞬で消えて、あるべき場所に戻ってたはずだよ」
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