7人が本棚に入れています
本棚に追加
「フッ、ありがとう。そうだね。『天翔ける銀の月』。この鎌の名前だ」
「名前もきれい」
「だね」ユーディは満足そうに微笑んだ。
うわー。今のユーディ、たまらなく素敵ー。
フェリスは思わず鼻を鳴らした。
「けど、鎌で脅しただけで逃げてったってすごいです」
「『天翔ける銀の月』もユーディもこっちでは有名だから。特にあーゆー下層のやつらの間では広まってるんじゃない?昔、あれで、刈り取られたってやつも多いだろうし」フェリスが横から口をはさんだ。
そうなんだ…有名なんだ…「だったら、この鎌、貸してください」プリエはすぐそこにあるユーディの赤を秘めた青い目を見た。
ユーディもフェリスもあからさまにぎょっとした顔をした。
「もし、あいつらが来たら、この鎌で脅して、ダメならザクッってしちゃえば良いんですよね?」
「貸すわけにはいかない。この鎌は私のパートナーだから」ユーディが苦笑しながら言った。
「そもそも、ユーディにしか扱えないから」フェリスは呆れた顔をしている。「特別な鎌なんだよ。最下層のものたちをザクザク刈り取っているから、刈り取りの鎌って呼ばれてるけど、鎌の刃先に触れたものを本来あるべき場所に移す。そういう力のある鎌なんだ」
「移す?鎌で刈られて死ぬわけじゃないんだ?」
「あー、こっちではあっちの世界で言う”死”ってのはないから。そもそも肉体がないのに、どうやって死ぬんだよ」
ん?なんか言い方がちょっと腹立つけど、そう言われたらそっか。「本来あるべき場所?って?」プリエはフェリスをチラっと見た。
「こっちは階層世界っていうかね、境界線があるとか、上下ってわけじゃないんだけど、同じような人たちが近い場所で暮らしてる。自然と引き寄せられてそうなる。それがその人のあるべき場所。大抵の人は本来あるべき場所で普通に暮らしてるんだけど。悪いヤツ…レベル低い奴らの中には、まれに、違う場所にうまく紛れ込んだりしてるのがいるらしい。そーゆー奴らを刈り取るための特別な鎌」
「んー、不法侵入者を強制送還させる?みたいな?」
「あ、そうそう、そんなイメージ。さっきのあのグレーのだって、無理やりこじ開けてあがってきてたんだから、鎌で刈り取られたら一瞬で消えて、あるべき場所に戻ってたはずだよ」
最初のコメントを投稿しよう!