第2章 空中飛行

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「プリエ、(せい)は、例外なく向上を求めるものだ。けど、こちらでは向上し難い。あちらでの肉体を持っての生活は、生き抜きさえすればほぼ間違いなく向上につながる。うまくすれば格段のステップアップに繋がる。その絶好のチャンスを絶つのは重大な罪。それに見合った償いをすることになる。それほどの償い…どんなに辛いことだろう…もちろん、自殺者であっても、反省して償って地道に上がっていく者たちも居る。だけど、辛いことであるには違いない」 「辛いから、楽になりたいと思って死んだら、もっと辛いのがもっと長く続くってこと。向こうで這いつくばってでも生き抜いた方が数段楽ってこと」フェリスは得意気に言った。 「あたし別に辛いとかってわけじゃ…」 「だったらなおさらだよ。プリエ、向こうへ戻りなよ」フェリスは小さく溜息をついた。 「戻るって…どうやって?」 「だよね…」フェリスはプリエの消えかけの銀の紐に目をやった。 「あたしのしっぽが何?」 「そんなに薄くちゃね…戻れないよね…戻ってくれないと僕も困るんだけどな…」フェリスはボソボソとつぶやいた。 「あ、フェリス、受け取って」ユーディが突然プリエをフェリスの方へ差し出した。 「へっ?何?受け取る?」  フェリスが手を出す前にユーディが消えた。  えっ!ユーディ?!落ちる!  フェリスは自由落下を始めたプリエを抱きとめた。が、そのまま真下に数メートル下降した。 「わっ、ちょっと。ささえてよ?!」  フェリスはなんとか持ちこたえてゆるゆると空中を進みだした。 「間に合った」フェリスはほっとした顔をした。 「もう!落ちるかと思った。ホント、頼りないんだから」  フェリスは一瞬、ムッとした表情をのぞかせた。「とりあえず、行くよ」そう言うとそのまま空中を進んだ。「僕の首に手まわして」 「やだ」 「もう…じゃあ、せめてもうちょっと寄ってくれないかな」 「なんでよ。そんなにひっつきたい?」 「別に。その方が楽なだけだよ」フェリスは溜息交じりで言った。 「ユーディはそんな事言わなかった」 「ユーディみたいに楽にこれやってると思わないでよ。僕は、ひ弱なインテリボーイなんだからね」 「プッ 何それ?ぴったりくるけど」 「リリがね、そう言うんだ」 「リリって誰?」 「こっちでの僕の育ての親。リリの所へ向かってるから、すぐに会えるよ」
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