第1章 救出

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 プリエは気付くと、薄暗い場所にポツンと立って居た。  ここ、どこだろ?周りが良く見えない…霧?あたし、階段から落ちて…  プリエは自分の体を確認してみた。  どこもなんともない?痛くもない。 何?このしっぽみたいなの…  プリエは自分の体からしっぽのように出ている銀色の紐に触れようとしたが、手がすり抜けた。 「え?」何、これ。触れない?  良く見ると、紐の先はフェードアウトしていて、紐自体も半透明になっている。 「居た」「あの娘だ」離れた所から声が聞こえた。  プリエが声のした方を見ると、数人の人影なようなものが見えた。何故か視界が急にクリアになっている。  何、あのグレーな人たち。なんかすごく…気味悪い。人?…だけど、あんな全身グレーって有り得ないし。あたし、もしかして死んだのかな?わっ、こっちに向かってくる…  プリエは後ずさりした。グレーな人たちはもう十数メートル程の所まで迫ってきている。  どうしよう…とにかく逃げなきゃ  そう思った瞬間、突然、頭上に白く光る穴が開き、そこから華奢な白い手がプリエに向かって伸びてきた。 「ひっ!」プリエは思わず、白い手を避けて、その場に座りこんでしまった。 「ばか、避けるなよ」頭上から少年の声がした。「プリエ、手を伸ばして」 「え」あたしの事知ってる?けど、この手、何?あのグレーは気味悪いけど、頭の上の穴から手ってのもちょっと… 「いいから、僕の手をとって!早く!あまりもたない」  え?けど…  前に目を戻すとグレーな人たちが数メートルの所まで迫っている。顔もはっきり確認できる。表情も乏しくますます気味悪く感じる。  何かわかんないけど、あのグレーの方が怖いっ!いや!  プリエは片手をいっぱいに伸ばして白い手をとった。白い手はプリエをひっぱりあげようとしている。プリエは必至でもう片方の手も重ねた。  もう、誰でも良いから、早く、あげて!  白い手も両手でプリエを引き上げている。宙吊りになっているプリエの足を何かがつかんだ。「いやー!何なのよー」プリエは必至に足をばたつかせて振り落とそうとした。 「うわっ、あばれんなって」上から焦った少年の声がする。  それでもなんとかプリエがひっぱりあげられると同時に穴が閉じた。 「はぁ…焦った」少年はその場に座りこんだままつぶやいた。
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