第2話 記録と記憶

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次第に映写機は、グロテスクな映像を流し始め、見ているだけでも気分が悪くなる。 少しすると、その何かはゆらりと動き、客席であるこちらにゆっくり歩いて来た。 「……あ」 まずい、何故俺は悠長に眺めていたんだ。 夢だと自覚した時にまず警戒する者ではないか。 すでに見慣れた“アレ”の登場に身体が固まる。 又殺されるかも知れないという恐怖からか、足がすくんで動かない。 何故だ。 明晰夢は自分の思いのままに出来るのではなかったのか。 これじゃぁ話が違う。 「……お前は一体何なんだ」 夢は潜在意識の現れともいう。 ならば俺は一体何を恐れているというのだろうか。 “アレ”はそんな俺の事情などお構いなしにじわじわと近づいてくる。 「何故俺を追い回す」 聞いても“アレ”は答えてくれない。 「止まれ!」 勿論そんな声を張り上げても“アレ”は止まってくれない。 足は動かず、頭の中では何度も逃げろと声が聞こえる。 ついに“アレ”が俺に触れようとした時、身体がふらりと後ろに傾いた。 動ける。 理解したと同時にその場で後ろに跳びのき、客席の奥にある扉へと全力で走った。 まずは外に出よう。 そう思い扉に手をかけて勢いよく開ける。 気がついたら俺はステージの上に立っていた。
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