第2話 記録と記憶

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「あ……れ?」 扉の先がステージだったのか。 いや違う、空間が切り取られたみたいに又元の場所に戻っているんだ。 その証拠にさっき入った扉はなくなり、目の前のステージ下には“アレ”がいた。 自分だけ元の場所に引き戻されたのか。 「夢っていうやつは、理解すると本当に奇天烈な世界だな」 “アレ”も俺の場所が移動したのに気付き、ゆらりとステージによじ登って来る。 ステージの壁には未だ映像が映され、不思議な雰囲気を醸し出している。 「ん?」 ふと、天井に違和感を覚えて見上げると、ずらりと並んだ照明が不自然に揺れていた。 「……まさか」 ドラマや映画でこの状況は見た事が有る。 確かこの後照明を支えているはずの留め具や紐が緩み、落下するんだっけ。 理解したと同時に、それを再現するかの様に照明は俺の真上に綺麗に落下し、呆気なく下敷きになる。 ほらやっぱり、と思いながらも意識は次第に遠のいて行った。 そして俺は見慣れた場所で目を覚ます。 「すげー夢」 そう呟きながらもベッドの近くに置いていた《儚録》を手に取った。 何が何だか全く理解出来なかった。 まさかの日記始めがこんな内容とは、これからもこの日記は随分と濃くなりそうだな。
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