第1話 繰り返される悪夢

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「うわっ!」 ベッドから勢いよく飛び起き、辺りを見渡す。 6畳ほどの部屋にベッド、勉強机、本棚がある一般的なひとり部屋。 自分の体を見れば汗がじゅっくりと服を湿らせ、体に張り付いているものの、手も足も首もある。 「……なんだ……夢かよ」 生きている事を再認識したと同時に、ホッと胸をなでおろした。 こんな夢を見たのは何度目だろうか、正直もう覚えてない。 夢の中の俺はいつも何かに追われ、殺される。 だが、その何かは目を覚ますと忘れてしまうのだ。 アレ程鮮明に記憶にこびりつくほど衝撃的な夢でも、何故かその何かだけは思い出せない。 本当に夢とは都合のいい存在だ。 水色の布団をどかし、体を起こして時計を見る。 デジタル時計に表示された時間は、午前7時。 「学校かぁ」 正直休みたいと思うがそうも言ってられない。 制服に袖を通し、ネクタイを締めて、リュックに今日の授業で使われる教科書を詰め込む。 部屋から出ると、狭い廊下の先にある壁沿いの階段を降りて、すぐ左の部屋に入った。 「お早う」 台所からいつも通りの母の声が聞こえる。 居間には、新聞を読みながら味噌汁を飲む白髪混じりの寡黙な父と、パンを咥える2つ下の妹の(ひとみ)が居た。 正にごく一般的な何の変哲も個性もない朝の風景。
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