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「うわっ!」
ベッドから勢いよく飛び起き、辺りを見渡す。
6畳ほどの部屋にベッド、勉強机、本棚がある一般的なひとり部屋。
自分の体を見れば汗がじゅっくりと服を湿らせ、体に張り付いているものの、手も足も首もある。
「……なんだ……夢かよ」
生きている事を再認識したと同時に、ホッと胸をなでおろした。
こんな夢を見たのは何度目だろうか、正直もう覚えてない。
夢の中の俺はいつも何かに追われ、殺される。
だが、その何かは目を覚ますと忘れてしまうのだ。
アレ程鮮明に記憶にこびりつくほど衝撃的な夢でも、何故かその何かだけは思い出せない。
本当に夢とは都合のいい存在だ。
水色の布団をどかし、体を起こして時計を見る。
デジタル時計に表示された時間は、午前7時。
「学校かぁ」
正直休みたいと思うがそうも言ってられない。
制服に袖を通し、ネクタイを締めて、リュックに今日の授業で使われる教科書を詰め込む。
部屋から出ると、狭い廊下の先にある壁沿いの階段を降りて、すぐ左の部屋に入った。
「お早う」
台所からいつも通りの母の声が聞こえる。
居間には、新聞を読みながら味噌汁を飲む白髪混じりの寡黙な父と、パンを咥える2つ下の妹の瞳が居た。
正にごく一般的な何の変哲も個性もない朝の風景。
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