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「お兄ちゃん遅ーい」
「悪かったな」
瞳の言葉に適当に答えて、パンをその場で咥える。
「座って食べなさいよ」
「時間がないし、今日はもう出るから」
「え、嘘!ちょっと待って!」
母の言葉に答えて、そのまま居間を離れようとすると、瞳が食事を慌てて口の中にかき入れた。
俺はそんな瞳を無視して、玄関でパンを食いながら靴を履く。
すると、少ししてバタバタと足音が聞こえ、瞳が付いて来た。
「ちょっと置いてかないでよ!」
膨れっ面で俺に付いてくる瞳を置いていかないように、さり気なくゆっくりと通学路を歩き始める。
それに気づいたのか、瞳は満足げに俺の横で落ち着いた。
全く兄離れ出来ない困った妹だ。
瞳は黒のセミロングで身長が150㎝弱の中学3年生だ。
そして、兄の俺から見ても可愛い部類に入るぐらいの整った容姿。
ひとりで歩かせるなんて、正直出来ない。
だが、こんな話をすればシスコン呼ばわりされるだろうから、そう思われない為にも、つい素っ気ない態度を取ってしまう自分がいた。
学校に近づくと通学路でもある為、同じ制服を着る生徒が増えてくる。
さて、そろそろ瞳との分かれ道だ。
「じゃ」
適当にそう言って、俺は高校に向かう為左に進み、瞳は右に曲がる。
そして少し歩いた後、立ち止まり振り返ると、瞳も気にせず歩く後ろ姿が見えた。
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