447人が本棚に入れています
本棚に追加
大丈夫だろうか。
ふと、不安がよぎる。
「ほう、今日のアキくんも安定のシスコンですな」
突如後方から声が聞こえ、激しく心臓が飛び跳ねた。
振り返ればかなり近い距離にクラスメートの顔があり、俺は慌てて距離をとる。
「近い、後アキくんは止めろ」
「え、なら“アーくん”“アッキー”“アキぴょん”で言うならどれがいい?」
「喧嘩売ってんのか、普通に明人って呼べよ」
「えー、可愛くねーじゃん。
蝶名 明人君よう」
「フルネームで呼ぶな」
この図々しく絡んでくる男の名前は、太宰 春樹。
何処かの文豪の様に自殺癖もなければ、女にだらしがないわけでもないが、イマイチ性格が掴めない点は似ているのかもしれない。
しかも、こんな性格の割には制服はしっかりと着こなし、背筋もピンと伸びている。
身長も180で、女性の好む甘いマスクと言う、何処かの物語から出て来たかと思うほど完璧な奴だ。
柄シャツを中に着て、少し猫背な俺とは本当に正反対で、正直隣を歩きたくないのだが、何故か俺はコイツに好かれてる。
「で、妹さんはもう大丈夫なのか?」
学校に向かって又歩き始めると、太宰は早速妹の話題を出してきた。
先程のふざけた声ではなく、真面目な声。
まあ当たり前か、あの事故の話しはふざけながらする会話ではないのだから。
最初のコメントを投稿しよう!