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「まだ決めてないよ。明日ゆっくり選ぶんだ」
「そうかそうか。これやるよ」
一人が今月号のゲーム雑誌を光に渡した。
「ありがとう」
「構わないって。好きなゲーム買えよ」
クラスメイトたちは、あのゲームは面白い、あのハードは性能が高いと光に語る。
「迷うよね」
そんなとき、クラスメイトの一人が真顔になった。
「どうしたの?」
「いや、桜宮玲(さくらみやれい)がお前のことを見てたぞ」
「桜宮さんが?」
探してみるが、桜宮の姿はすでになかった。
確か隣のクラスの女子生徒だ。違う県から入学し、寮住まいをしているとは知っている。髪を肩まで伸ばした、目の大きな可愛い女子生徒である。しかし、逆にそれぐらいしか知らない相手である。
「なんかゲームの話に興味でもあったんじゃないか」
「ふーん……」
言われたが、光の心は既にゲームに支配されていた。桜宮さんもゲームやりたいのかな。なんでもゲームに関連づけてしまう。
「なに買ったか教えろよ」
「みんなー光の家に乗り込もうな」
クラスメイトの一人がそう言うと、みんな軽く笑いあった。
そのまま、光はクラスメイトと楽しく話ながら下校した。こんなに心が浮き立ったことはない。明日が待ち遠しかった。
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