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「お母さん、まだ準備してなかったの? 初詣行くって話したでしょ?」
「あー……そういや、そうだったね」
「あれ?……誰か来てたの?」
祖母の向かい側に置かれた湯のみを見て、母は祖母に訊ねた。
「……貴史だよ。じぃさんたちと一緒に来たんじゃ」
「また訳の分からないこと言って! 貴史は、一昨年の夏に事故で……。新年早々、この話は やめましょ。それより、ほら! 早く着替えないと!」
「いいか!! ワシが死んでも、あのこたつだけは捨てたらあかんぞ!! こたつには、御先祖様たちが帰ってくるんじゃ!!」
祖母の気迫に母は圧され、「……分かりました」と言った。それを聞いた祖母は、こちらに視線を送ると、両目をパチッと瞑った。彼女の中では、これがウィンクなのだろう。
こたつには、精霊(御先祖様)が居る。
それは本当かどうかは分からないが、こうして魂だけとなった自分が正月に帰省し、こたつに入っているのだから、あながち間違いではないのかもしれない。
こたつには精霊がいる【完】
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