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「こんな広くてどこまで手をつけていいか分からないような場所で、本当に探せるの? 僕には途方もない作業のような気がするけど」
「ああ。途方もないよなぁ」
(なんでそんなに嬉しそうなのさ。本当に一生砂かき分けて過ごすつもり?)
「けど残念なことにある程度範囲がつかめてるんだよ」
(良かったぁ!)
「ただその中に見つからなければ上に登って行くしかないんだ」
そう言って見上げたのはピラミッドの上の方。
「ふーん」
言われて改めてリオは上を見上げ直す。
そのうち、それがとんでもないことだと気づいた。
(こ これを登るの!?)
それは声に出ていたらしい。
「そんなに嬉しそうに言うなよ」
(言ってない! 言ってない!)
「普通は許可が無いと登れないんだ。有名な所なんか特にな。でも、これは未発見の部類に入ってて調査団も来ないような大きさだから登っても平気だよ。あまり心配するな」
(違うよ! こんなの登ってけるのか って話だよ!)
「クフ王のピラミッドなんか一辺が1,5メートルもあるから大変だけど、あれはデカいからな。これは一辺が80センチくらいしかない。上の方に行けば大きさもどんどん小さくなる。充分調べられるさ。あまり早く見つからないといいな。お前も上の方まで行きたいだろ?」
思いっきり首を横に振りたいリオ。夢見るように上を仰ぐハル。
「落ちたりとか…しないのかな」
「それで死ぬ人も多いらしいな」
(死ぬの!?)
「命綱があるわけじゃないし。デカい石を転げ落ちていくんだから無事じゃ済まないと思うよ。ま、気をつけて行けばいいさ」
(気をつけて、行く……逝く の間違いじゃないよね?)
「下で、砂払ってるうちに早く見つかるといいね……」
「それじゃお前もつまらないだろう? すぐ見つけたいだろうってお前が俺の気持ちを汲んでくれるのは嬉しいけど、お互い、どうせなら登りたいよな? 大丈夫、見つかっても登ろうな。きっと素晴らしい景色だぞ!」
(『なんとか』は高いところに登りたがる……僕はその『なんとか』じゃないよ!)
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