無敵のハル

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「暑いよ、ハル」 「そうだな」 しばらくして言う。 「暑いよ、ハル」 「そうだな」 ちょっと経ってまた言う。 「暑いよ!! ハル!!!」 「そうか」 ハルは笑い転げてる。 「お前な。暑いところに来たんだから暑いのは当り前だろ? いい加減、暑いって言うのはやめろよ」 まるで聞くのに飽きたみたいな言い方。 「せめて『暑い』くらい言わせろよ。暑いんだから」 「お前の言葉が暑苦しい。おい、暑くったって帽子は被っておけよ。日射病になるぞ」  そう言ってミネラルウォーターをリオに投げてきた。それはちっとも冷たくなんかない。 「あったかいよ! ハル!」 「そうだな」 ――僕はハルに会いたくて飛んで来たんだぞ。 ――感激の再会だったじゃないか。 ――もうちょっと浸っていたかった……  今リオが浸っているのは、太陽の有り難い熱射の中だ。真昼間はテントの中で過ごす。外では、暑いのにきちんと着込んで仕事にかかる。 「ちゃんと着てないと、暑さにやられるぞ」 「ハル。『輻射熱』って知ってる?」 「で?」 「ハルさ、そんなにかがんで作業してて大丈夫なの? 上から下から熱気にやられて辛いだろう?」 「だからって、今休む理由にはならないな」 (これだから研究者っていやなんだ。ここ何日も一緒にいるのに、日中は僕のことほとんど見てないだろ! このやつれてるいたいけな弟を見ろよ!)  そう思った矢先にハルが振り返った。 (お! 通じたかも)   
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