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「だからさ、なんで鍵なんだっけ?」
「忘れたのか?」
(さっき覚えてないって言ったよね!?)
「大事なことを忘れるなんて、たるんでるぞ」
(ぼく、たるみっぱなしーって、説明受けてないからな!)
「俺の引き出しのファイル、全部読んだんだろ? あの中にレポートがあっただろう、一番分厚いやつ。思い出したか? 書いてあっただろう」
(………すみません…ぼく、サボりました……って、分厚いなんてもんじゃない、あれは本だよ! ちょっと眺めて後回しにしちゃったんだよ! それに僕はハルみたいには読めないよ)
パソコンに依存してきたリオには理数系じゃない世界には追いついて行けない。ここは手書きで通して来たハルの世界だ。全部が頭に入っているハル。すっかりリオも同じだと思っている。
(兄ちゃん、兄ちゃん! 可愛そうな弟に愛の手を!!)
ハルは背を向けた。
(え? ホントに話、終わり? ウソッ!)
必死になって自分の頭の中の記憶倉庫の鍵を開ける。
(鍵、欲しいよ!)
どうやら、その引き出しには頑丈な鍵がかかってるらしい。チラとも数字以外片鱗さえ見えない。仕方ない。
「ハル」
振り返ってくれた!
「僕さ、やっぱり覚えてないみたいだ」
ハルがため息をついているのが分かる。
「こっちに来い」
テントに向かった。
(やった! テントで休める!)
2時間後、リオは自分がバカだったと後悔する。
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