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プロローグ
およそ「診察室」という響きには似つかわしくない、落ち着いた色彩で整えられた居心地の良い……ただし無個性な……応接室のような部屋である。
卵色の漆喰の壁に広く穿たれた窓から、レースのカーテンに絡みとられた日差しがまろやかに溶け込み、部屋は親しみやすく温かな雰囲気に満ちている。
各務幸彦が座る一人掛けのソファの向かいに、ローテーブルを挟み二人掛けの布張りのソファが配置されている。そこに今、真鳥和巳が掛けていた。
「それじゃ今は舞台を主にやっているんですね」
「主にというか、舞台しかやっていないです。
……映画も演りたいんですが……」
自分の顔色を窺うように見る真鳥の反応も各務は気にせず、各務は雑談のような調子で問いかける。
「私は素人だから解らないのだけれど、舞台と映画では、所謂役作りが違うんですか?」
「役作りというよりは、演じ方というか、役の入り方が違うような気がするんです。……俺の場合は、ですが」
「役の入り方?」
「自分の感覚なんですが、舞台では役を自分の外へ出していくのに対し、映画では役を内側に入れていくというか……」
「外と内ですか」
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