一章

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 いつの間にか市街地に入っていた赤いクーペは信号待ちで止まった。  友永は真鳥に穏やかな顔を見せた。友永は真鳥に時々この顔を向ける。解りやすい笑みではない。ただ、この顔を向けられると真鳥は不思議と温かい気持ちになる。 「お前はどうか知らないけど、俺はお前のこと友達だと思ってる。  まあ、友達っていうには、お前からしたら歳離れ過ぎてるかもしれないけど。  俺もね、自分で言うのもなんだけど人気俳優だから、毎日うんざりするほどスケジュールが詰まってて仕事じゃそれなりに消耗する。  だからオフくらいは気の置けない奴と楽に過ごしたいんだよ」  友永は拳を作って軽く友永の肩を小突くと、視線を前に戻して青になった信号の下でアクセルを踏んだ。 「……『楽に過ごす』なら周囲に気付かれないようにもう少し地味にしたらどうなんですか?」  浮つく気持ちを抑えるように、真鳥はつい皮肉を言ってしまう。 「来たい服を着て、乗りたい車に乗り、食べたいものを食べるのが俺の『楽』の流儀なんだよ  お前こそどうなの、その上から下までユニクロみたいな……」 「上はユニクロですけど下はGAPです」     
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