一章

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 真鳥はカジュアルなボタンダウンシャツと半端丈パンツに、小物は帆布のトートバッグとキャップと黒セルの眼鏡という、郊外の大学生のような恰好だ。顔が小さくスタイルがいい真鳥はそれでもモデルのような見栄えだが、友永は不満であるらしい。 「あとその全然似合わない眼鏡はなんなの。  伊達だろ?」 「……最近舞台で顔が知られてきたみたいで、電車とか乗ってると声かけられるようになったんです。それで」 「お前のきれーなお顔が、そんなんで隠せると思ってるのか?  今度俺がいいの選んでやるから。服も」 「嫌ですよ。友永さんの選ぶのみんな派手だし高価いじゃないですか。俺はあなたみたいに稼ぎ良くないんです。  あと、ユニクロとGAPとJINSは機能的だしリーズナブルだし俺は好きです」 「俺より好き?」 「そうですね」  澄まして答えたが、友永がわざと悔しそうな顔をして見せるので、真鳥は思わず笑いそうになる。  真鳥のパンツのポケットからバイブ音がして、会話が中断する。 「すみません、友永さん  今、山名さんからラインで稽古の前に事務所来れないかって」  スマートフォンの画面を確認して真鳥が言うと、友永は前を向いたままちょっとだけ口を尖らせた。メディアではお目に掛かれない子供っぽい仕草だ。 「急ぎか? それ」 「……社長がランチミーティングしたいそうです」  真鳥が返信の内容を読み上げると友永は溜息をついてナビに進路の変更を言い渡した。 「和巳、今日俺オフなんだよ」     
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