一章

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「さっき聞きましたよ」 「夜は空いてるだろ?  夕飯御馳走してやるからうちに来なさい」  真鳥は少し笑った 「命令なんですか?」 「いいだろ? 久々に凝ったもの作りたいし。  お前が来るなら作り甲斐がある」 「お友達の女性でも呼んだらいいじゃないですか」  多少の皮肉を込めて真鳥が言うと、友永は過去の何かを思い出したのか眉間に皺を寄せる。 「女は部屋荒らすから家に入れないことにしてんの」 「俺だって散らかしますし汚しますよ」 「そういうレベルじゃないんだよ……」  余程嫌な思い出だったのかと思うほど渋面を作ると、友永は「もうこの話は終わり」と言って話題を変えていく。  友永は自分の女性関係を真鳥には殆ど話さない。真鳥は大体ネットの芸能記事で友永のそういった噂を知る。普段友永から女性の気配を感じることはないが、噂のいくつかは本当のことなのだろう。
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