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漸く自分の中の真実に触れた苦しみか、友永の声がひび割れる。
「お前の秘密が知りたかった、だから俺は麦子さんと寝たんだよ」
以前なら、そんな風に言われて、真鳥の気持ちは舞い上がったかもしれない。
だがもういい。
友情と恋愛は、どこまで行っても平行線だ。
「俺の気持ちを解っているなら、もうそんな、気を持たせるようなことを言わないでください」
真鳥は感情を込めず静かに言ったつもりだったが、語尾はわずかにぶれた。未練がまだ、消えていないと気づく。ミドリと一緒に、フィルムの中の砂漠の惑星に置いてきたはずだったのに、まだその思いが化石になり切れていないのだ。
「俺だってお前が好きだよ!!」
友永は再び噛みつくような情熱を真鳥に向ける。
「友人としてって意味でしょう!?」
覚えず、真鳥の声が引き攣れた。
「それで俺にどうしろっていうんですか!
あなたはストレートじゃないですかっ!!」
苦しい感情が、止まらなくなる。行き場もないまま小さく圧縮されていた数年間の思いが、涙に浸されたように膨張して胸を内側から圧迫する。
「俺があなたを好きっていうのは、恋愛感情なんですよ!?
それともあなた俺のそういう不純な感情を受け容れられるっていうんですか!?」
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