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虚飾の姿で友永の心を奪いたくなかった。
現実世界でまで演じてしまったら、真鳥自身の“現実”がフィクションに消えてしまう。
だから友永の前だけではずっと演じずにいたのだ。
友永は真鳥の煩悶などお構いなしに、真鳥が纏った恐れの鎧をあっさりと破壊して距離を詰め、真鳥の両肩を掴んだ。
「演技がお前の武器なんだろ? なら使えばいい、堂々と。
俺を誘惑して、俺を落として、自分の物にすればいい。
椋木静流でも、ミドリでもない、お前自身を演じて見せろ。
“真鳥和巳”を演れるのはお前だけだろ?」
真鳥は条件反射で考える。
――“真鳥和巳”はどんなヤツだっただろう?
そいつのことはよく知っているはずだった。
死にたがりで命を邪険に扱ってきた。
だがいつの間にかその続きを見たいなんて我儘に願っている。
なぜかと言えば……多分、恋をしたからだ。
それは何て、馬鹿馬鹿しく、下らない理由であることか。
真鳥は友永を見上げた。
眉間の皺は消えていて、彼が今とても穏やかな顔をしているのは何故だろう?
彼を愛おしいと思う。
“真鳥和巳”が持っているのはただその単純な気持ちだけ。駆け引きの材料など何もない。
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