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「友永さん、元気になりました?」
スタッフに連れられて会場へ向かう途中、真鳥は小声で友永に聞いた。
「元気? なんで?」
「とてもお疲れみたいだったので。
以前ハグには疲労回復効果があるって、言ってたでしょう?」
「ああ……」
友永は喉の奥で控えめに笑う。
「なったなった。元気になり過ぎてちょっとやばかったな」
友永は前を見たまま素知らぬ顔で、隣を歩く真鳥の手を手探りで握った。
「友永さんっ……」
思わず大声をあげそうになった真鳥を、友永は人差し指を唇に当てて制止する。
真鳥が口を噤んだのをいいことに、友永は指を全部真鳥の指に絡めて握り直した。
「友永さん」
真鳥は今度は抵抗を言葉には表さず睨んだが、友永は上機嫌で全く意に介さない、
「前の舞台挨拶の時は肩組んだし、今日はこれでいこう」
真鳥は溜息を吐いた。もうどうなっても知らないことにする。
試写室の前に到着する。神田と浜松も先に来ている。もう、すぐに出番だ。
真鳥は友永が握った手に少し力を込めた。
「友永さん、あとで……」
会場スタッフが重そうな試写室の扉に手を掛けた。
真鳥は友永を見る。
「俺の秘密を聞いてくれますか」
友永は穏やかに微笑んだ。
「勿論」
試写室の扉が開く。
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