一章

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 大学も大して苦労もなく都内の有名私立大に進んだ。医者である父親も、息子に跡を継がせることは望まず好きな道を選べと言ったので、友永は将来経営者になるのもよいかと思い、経済学部を選んだ。大学の講義もそれなりに面白く、交友関係が広い友永のキャンパスライフは充実していた。昼夜を問わず遊びに付き合ってくれる友人にも、セックスのパートナーにする女性にも、不足することはなかった。  友永が芸能活動を始めたのは、代官山を歩いていてモデルにスカウトされたのがきっかけだった。最初は雑誌に載る程度だったのが、東京コレクションでランウェイを歩いたのを切っ掛けに知名度が上がり、なぜかドラマへの出演依頼が舞い込んできた。とはいえ、脇役であったし、大して出番もなかったので、友永はアルバイト感覚で引き受けた。  友永はそれまで芝居について経験は勿論興味もなく、ドラマや映画はたまに見るという程度だったが、実際演じてみて特に難しさは感じなかった。放映されると友永の登場シーンには反響が大きく、無名だがイケメンで演技もうまいと話題になった。そのうちに次のドラマの出演の話があり、これも受けると友永の人気は一気に上昇した。後から知った話だが、友永の入った事務所は業界でもかなり大手で、友永が俳優業に関して素人にもかかわらず立て続けにオファーがあったのは、事務所の力によるものだったらしい。  しかしきっかけはどうであれ、ドラマ三作目の出演後には、友永の人気はかなりのものになっていた。大学構内を歩いていても、しょっちゅう女子学生から声を掛けられるようになった。     
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