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真鳥の付き添いで来たわけでもない友永が待合室に通されているのは、プライバシー第一主義のこのクリニックでは普通あってはならないことである。勿論友永が真鳥にとって特別な存在であるから例外的な配慮がなされたということもあるが、今素知らぬ顔をしている受付嬢の個人的な好意も彼が待合室に入ることを許可された一因だろう。
「和巳、今日午後から芝居の稽古だろ?
送ってやるから昼飯一緒にどうだ?」
「いつも思うんですけど、友永さんなんで俺のスケジュール把握してるんです?
大体、あなた忙しいんじゃないんですか」
「今日オフなんだよ
久しぶりに会えて嬉しいぜ、和巳」
友永は真鳥に器用にウインクして見せた。真鳥のスケジュールをどうやって抑えたのかは胡麻化されたわけだが、大方自分のマネージャあたりが買収されたか懐柔されたかしたのだろうと真鳥は見当をつける。
「……会計まだなのでそれ待ってもらえるなら」
真鳥が例によって少し顔を逸らして答えたので、友永は満足げに顔を緩めた。そして今度は強引に各務の腕を取ると、「各務先生、俺の悩みもついでに聞いてくれません?」などと言いながら有無を言わさず各務を診察室引き入れてドアを閉めた。
「あのね、慧君」
先ほどまで各務が真鳥を診察していたその部屋は、患者のプライバシーに配慮し、外や待合室に声が漏れないだけの防音性がある。もちろん、友永はそのことを知っていて各務とこの部屋に入ったのだ。
「医者には守秘義務というものがあって……」
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