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友永は自分のシーンだけでどれだけ時間を食ったかを思うと、他のキャストには申し訳ない思いだった。他のキャストはみなそれなりの実績がある実力派ばかりで、誰も友永ほど罵声を浴びせられた者も、テイクが嵩んだ者もいない。……今まで、友永は自分以外の俳優の演技など気にしたこともなかった。自分の出演しているドラマもまともに見たことがない、どこかで見たことがあるような恋愛ドラマばかりで、見る必要も感じなかった。友永が“出演した”ことだけに意味があった。所詮、友永にとって俳優業は遊びだったからだ。だから、改めてこの映画で他のキャストの演技を間近に見て、自分の浅慮を恥じた。彼らの役作りと芝居にかける情熱が、友永には美しい夜明けの太陽のように煌いて見えた。
翌日の撮影から友永は本気で役に取り組んだ。今までどんなに力を入れても七十パーセントくらいでセーブしていた自分の集中力を、昨日のように最初から百パーセント使って演じた。それでもテイクは嵩んだ。そして共演者の誰もが、友永がまだ経験が浅く役者として未熟であることを理解していて、友永のせいで一向にOKが出なくても、撮影が押しても、嫌味の一つも言わないばかりか、友永を励ましたり、神田がろくに褒めるということをしない分を補うように労ってくれたりするのに気づいた。勿論たまたま共演者に恵まれたということもあったのだろうが、共通の目的を持つ仲間という存在が心強く、友永は彼らに感謝しない日はなかった。
友永の演技力は日に日に向上していった。それはテイク数がだんだんと少なくなっていくことから誰にも分かった。やがてオールアップの日が来て、もう一人の主演である里見から世辞ではない賛辞をもらい、友永は少し泣いた。
友永は二十一年生きてきてやっと気付いた。自分が思いのほか平凡でつまらない人間であったこと。やっとスタートラインらしき場所に立ったこと。
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