一章

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「各務先生と何話してたんですか」  車が住宅街を滑るように走り出すと、真鳥は一言目にそう聞いた。 「別に……世間話だよ」 「……」  真鳥は友永を横目で少し睨んだ 「……悪い、お前のこと聞いた」  友永は嘘やごまかしが苦手なたちらしい。下手なのではなくて、苦手なのだと、以前自分で言っていた。嘘を吐くのがなんだか落ち着かないのだという。  そういうところも、多分友永の人間性の魅力なのだと真鳥は思う。 「各務先生なんて言ってました?」 「良くなってるって」 「俺に聞けばいいじゃないですか」 「お前嘘つくから」  言われて、真鳥は黙った。  精神の問題のことで、友永に嘘を吐いたことはないつもりだ。  真鳥はいつも「大丈夫」だと言っていただけだ。  自分ではそう思っていたから、そう答えた。けれどそれは友永の見たところ「嘘」だったのだろう。 「友永さん、……本当に大丈夫ですよ、俺は」 「……何が?」 「もう四年も経ちますし、いつまでも迷惑をかけるのも申し訳ないですし」 「俺はお前に迷惑かけられた覚えはないよ」 「貴重なオフを潰して俺の相手しなくてもいいって言ってるんです」 「久しぶりに会えて嬉しいって、さっき言っただろ」     
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