一章

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 人の話を聞かない性格の典型だとミドリは判別する。自己中心的で、他人への配慮に欠け、コミュニティにおいては孤立するタイプだ。その性格が災いしてこんな辺鄙な場所に飛ばされたというなら哀れではあるが、だからと言って押し付けられた者としては同情出来ない。 「……とりあえず、基地を案内します。生命維持設備が壊れている危険区域もありますから。それとあなたの住居を……」 「温室は?」 「え?」 「温室があるって聞いたけど?」  アオイが期待の眼差しを向けるのでミドリは狼狽えた。確かにこの基地には温室がある。それが植物学者という人種にとって居住環境より大切なことであってもおかしくはない。 「……温室は設備が壊れていて使えません」  温室は三年前の事故以来修復もしないまま放置している。分野外のミドリには手を付けることが出来なかった。その惨状を見たら彼がどんなに能天気な性格でもでも気を落とすに違いない。 「じゃあ修理しよう。案内して。 工具はある?」 「そんな簡単に修復できる状態ではないんです」  ミドリが慌てて言い添えたが、その間にアオイは早速研究室の汎用端末で研究所の見取り図を引き出していた。しかしそれを自分の携帯デバイスに共有するのに苦戦している。 「あなたのデバイスシリアルをまだリポジトリに登録していないから認証が通らないんですよ。  それとその見取り図は古いんです。危険区域が登録されていません。  ……私が案内しますから、ちょっと落ち着いて下さい」     
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