不出来な恋1

1/59
290人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ

不出来な恋1

「ふぁ~っ」  あくびをしながら外に出てシャッターを開けた。  首筋と背中に熱を感じてじんわりと汗をかく。  すでに太陽は真上にある。  何年も朝と呼べる時間に起きていない。  なぜなら朝から古本屋に来る客なんていないからだ。  この本屋の名前は「一刻堂古書店(いっこくどうこしょてん)」。  俺のじいさんが始めた商売だ。  しかし俺の代になってもこの店は客が少ない。  ぽつぽつとたまにやってくる客に本を売るのだ。  今はネット通販もやっているので昔よりは仕事は増えたが、漫画は一切扱わない方針のためかやっぱり客は少ない。  俺一人分の食いぶちさえ凌げればいいからそれでも構わないが、死んだ親父は俺にこの店を継がせるのを嫌がっていた。  しかし俺はこの店を気に入っていたからこの店を継いだのだ。     
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!