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不出来な恋1
「ふぁ~っ」
あくびをしながら外に出てシャッターを開けた。
首筋と背中に熱を感じてじんわりと汗をかく。
すでに太陽は真上にある。
何年も朝と呼べる時間に起きていない。
なぜなら朝から古本屋に来る客なんていないからだ。
この本屋の名前は「一刻堂古書店」。
俺のじいさんが始めた商売だ。
しかし俺の代になってもこの店は客が少ない。
ぽつぽつとたまにやってくる客に本を売るのだ。
今はネット通販もやっているので昔よりは仕事は増えたが、漫画は一切扱わない方針のためかやっぱり客は少ない。
俺一人分の食いぶちさえ凌げればいいからそれでも構わないが、死んだ親父は俺にこの店を継がせるのを嫌がっていた。
しかし俺はこの店を気に入っていたからこの店を継いだのだ。
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