第1章

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みつめていたい 視線 「ドアが閉まりまーす!」 ぷしゅうと目の前を横切るドアに今日も断ち切られる。 俺を射抜くまっすぐな彼の視線を―…。 ゆっくりと後方へ流れて行く彼の姿に目を凝らしたが、 さすがに朝のメトロ、 湿気を多く含んだ車内はガラスの向こう側をクリアに見せてくれることはなく、 早朝から続いたであろう勤務時間を終え、 お揃いのジャンバーを着た仲間達と談笑する彼のピンと伸びた背中を、 俺は為す術も無いまま水滴に歪んだガラス越しに見送った。 (行っちゃった…) 梅雨真っ只中の6月。 一瞬だけ浮上した気分は、 彼が視界から消えるとともにたっぷりと湿気をこもらせた憂鬱な車内に引き戻された…。
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