第1章

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(そう……信じたいよ) 思い出だけに縋って生きているような今の自分が頼りなく、 確かに信じられる何かを欲してしまう。 (俺もう……壊れそうだよ…長谷川さん………) すっかり落ち込んだ心をなだめながら駅からの道を歩く。 タイミング良く交差点の信号が変わり、 横断歩道へ踏み出した瞬間、 ケータイのベルが鳴った。 (誰だ…? 朝から) 「…はい。 渡辺です」 同じく信号待ちをしていた周りの人たちの視線を感じ、 着信の確認もせず通話ボタンを押して出たため相手がわからず、 無愛想な声になってしまった。 『貴弘?』 (!) 「はっ……っ」
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