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不意に聞こえてきた恋人の声に驚いて息が詰まり思い切り咽せてしまう。
『だ、
大丈夫か? 具合悪いのか?』
「…だい…じょ…」
『ゴメンな。
俺またかけ直すから』
当人はコトの重大さも知らずあっさり切ってしまいそうで、
俺は必死になって掠れた声を出した。
「き、
切らないでっ」
周りを歩いている人たちが数人、
興味深げに俺の顔を眺めていたがそんなことを気にしている余裕はなかった。
彼の声を聞いた瞬間、
やっと止まっていた時間が動き出した。
暗い地の底からやっと救われたような気分だったのだから。
『貴弘?』
「切らないで。
お願いだから」
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