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『あ……ああ。
今大丈夫なのか? 一応時差計算して掛けたんだけど…』
「長谷川さん」
『うん?』
「長谷川さん」
『なんだよ』
「長谷川さん」
『………』
「長谷川さ…ん」
『………うん。
ゴメンな…』
俺の声が涙混じりに上擦っていて、
格好悪いことこの上なかった。
声が聞けるだけで泣いてしまうほど嬉しいなんて。
会社へ向かう人の波で慌ただしい、
ムードもへったくれも無い天下の往来で、
心の一番もろい部分をさらけ出してしまうほど自分が追いつめられていたなんて…。
「長谷川さ…ん」
『早く、
帰れることに…なったんだ』
俺は人通りの少ない道に入り、
タバコの自販機の陰で顔を直す。
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