第1章

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入社から1年。 いつも通りの朝、 同じ時刻の電車。 しかも毎回同じ車両に乗る俺は、 これまた勝手に 『俺の指定席』 と決め込んだ先頭から二つ目のドアと座席の狭間に立っていた。 (今日の帰りでこの本読み終わるかな) 指定席と言っても座れるわけではない。 だが、 ドア側にも座席側にも寄りかかれるこの位置は通勤時間を読書で楽しむ俺には好都合だった。 なにしろ都内へ向かう朝のメトロだ、 いくらピーク時から時間をずらしていると言っても座席が空く事はほとんどなく、 ドアから離れたところに立ってなど居たら、 下車駅で踊るように人を掻き分けねばならなくなる。 まだ人の少ないうちに下車側のドア付近に立ち位置を決め込んだのはそんな理由からだった。
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