第1章

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この1年間、 ナワバリに匂いをこすり付ける獣のように俺は毎朝同じポジションに立ち、 ドアか座席側の手摺りに寄りかかると決まって本を開く。 毎日が同じ事の繰り返しであり、 それがもたらす退屈と安心にすっかり慣れた頃だった。 ちょっとした出来事から俺の平穏な日常がズレていってしまったのは―…。 ※ ※ ※ それは今から1ヶ月前。 …俺の好きな5月の出来事だった。 その日は信号機の故障とかで早朝からダイヤが乱れ、 珍しく車内はギュウギュウの超満員だった。 乗車率は殺人的な250%ってところだろう。
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