恋をしていた。

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難しい事はやめよう。 心のままに、 愛した軌跡に、 愛した奇跡に、 今はただ追憶の彼方に。 ――――― 「こないだの課題レポートを回収する」 物理の授業が終わり、岩田先生が一人一人の席を回る。 私は……物理が苦手なので殆ど白紙だ。 岩田先生は私の白紙の課題レポートを見て、 「何だ、神崎、簡単な練習問題だぞ」 そんな事言われても解らないものは仕方なのに。 「補習でもやるか」 それは酷いよ、ざわつく教室でこれじゃあさらし者だよ。 「先生、質問があるので補習に参加しても良いですか?」 「蒔田か、お前は本当に勉強熱心だな、良いだろう」 えぇー憧れの蒔田くんと一緒に補習、こんな事ってあるのね。 蒔田くんは勉強が出来て優しくて、えぇ、それから、それから……。 とにかく凄いのだよ。 その日の昼休み、クラスの女子三人が蒔田くんに手を出したら許さないと言って来た。 うぅ、怖いよう。 それでも、補習は受けないといけないし。 「どうしたの?元気ないね、子猫ちゃん」 昼休みに自分の机で途方にくれていると、蒔田くんが声をかけてきた。 それはもうビックリ。でも、子猫ちゃんは酷いよ。 「蒔田くん、ちゃんと名前で呼んで。私は『神崎しおり』」 「はいよ、しおりちゃん」 でも、改めて下の名前で呼ばれると照れるな。 ―――
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