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~1ヶ月後~
僕のワンルームマンションに妻が訪ねて来た。
「どうしたんだい?」
僕は目を丸くして妻を部屋へと入れると、彼女はキョロキョロと部屋を見渡して、目を釣り上げて言った。
「私、見たのよ。あなた、もう恋人ができたの?」
「はぁ? なんの事だ?」
「とぼけないで! 別れてから1ヶ月もたたないうちに、若い女とデートなんかして!
別れる前から付き合ってた、ってこと?」
「まさか! 僕は浮気なんてしたことないぞ!」
「じゃあ、あの女はなに?
私にプロポーズした『とっておきのイタリアン』に連れていくような特別な彼女、ってことでしょ?」
妻は僕に離婚届を突きつけたことなど、忘れたかのごとく詰め寄ってくる。
僕は眉毛を思いっきり下げて口を開いた。
「彼女は新入社員で、僕は教育係を任されているだけだよ。
この間はちょっと残業して遅くなったから、夕飯をご馳走しただけで。
付き合っているわけじゃない」
そして
「愛子、僕は君に捨てられたんだ。そうだろう?」
そう言って、左手を見せた。
そこにはもう指輪がはめられていない。
このことの意味が彼女にも通じているはずなのに、妻は
「わかってるわよ。わかってるけど…」
そう言葉を濁して帰っていった。
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