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悪女と言われれば、そうなのだろうと思う。
私と出会う前からヤマトさんはずっと沢山の人達に愛されて来た。
それを突然横から掻っ攫ったのだから。
それでも...なんと言われても私にはこの優しい旦那様の手を離すことなんてできない。
知らずに大切な人達を傷つけ続けてきた私。
そのまま深い闇に堕ちてしまおうとしていた私を見つけ出して、宝物のように大切に扱ってくれた人。
どうしようもなく醜い私を、私のままでいいと言ってくれた人...。
「君の過去も未来も、全て僕にくれないか。その人生が眩しく輝いている時も、光を失った闇の中にある時も。僕は君のすべてが欲しい。もちろん僕の全ては君に捧げるよ」
いつもの微睡みの中にあるような眼差しではなく、真っ直ぐに私を見据えて彼がくれた言葉。
私はきっと忘れない。
たとえこの先にどんな未来が待っていようとも、彼さえいれば、道を間違えることはないだろう。
だから私は泡にはならない。
「寧々ちゃん...再会まではもう少し時間をくれるかな...」
爽やかな風と暖かな光が差し込む窓の外に、私の独り言は消えた。
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