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言いながら起き上がり、ボサボサの髪を手ぐしでざっと整える。
寝癖なんてついている所をほとんど見たことがないヤマトさんの髪は、私の好きな鎖骨下あたりでサラサラと揺れていた。
「なんでそんなにサラサラなんですか...同じシャンプー使ってるのに」
ヤマトさんはあのプロポーズの後、1ヶ月程かけて引退する準備を整え、あっさりと辞めてしまった。
もちろん考え直さないかと何度も言われていたが、ヤマトさんの意志を変えることは誰にもできなかった。
コウさんが引き留めていたとしたら、きっとヤマトさんは引退しなかったと思う。
けれどコウさんはそうはしなかったし、ヤマトさんもそれを分かっていたから引退を決意した。
そうして惜しまれつつアイドルという光の当たり過ぎる場所から去ったヤマトさんだったが、その外見が突然変わることなんてあるはずもなく。
現役時代となんら変わることない美しさは、凡人の私には羨ましい限りであった。
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