恋と呼べない2人

4/23
前へ
/192ページ
次へ
「上を!着てください!」 「汗が引いてないから」 「じゃあせめてタオルかけといてください!」 「暑いから嫌だ」 このマイペース人間め...。 今日は仕事が昼からだと言うのに、いつも決まった時間に起きる。 「わかりましたよ、もう...。何か用でしたか?」 「.....忘れた」 「えぇ...またですかぁ?」 ヤマトさんはよく言おうとしたことを忘れる。 こっちは何だったのか気になるっていうのに、当の本人は「忘れるくらいだから大したことじゃない」とシレッとしているのだ。 「とりあえず水が飲みたい」 「あ、はい」 急いでグラスに水を注いで手渡す。 「ありがと」 笑顔とまでは行かないものの、少し柔らかい表情でグラスを受け取るヤマトさんを見ると、なんだか嬉しくなってしまう。 そんな些細な表情の変化が喜びになるくらい、この人はポーカーフェイスなのだ。 とは言え、ヤマトさんをよく知らない人から見れば、変化に気づかないほどの違いなのだが。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加