恋と呼べない2人

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私が小さな喜びに浸っている間に、ヤマトさんはグラスを片手に既にリビングへ移動していた。 いかん。ヤマトさんに気を取られている場合ではない。 少し残っていた片付けをやってしまわなくては。 私は落としてしまったお皿を洗い直し、辺りの水気を布巾で拭き取った。 食器洗浄機が付いているのだけれど、朝食の食器は僅かなものなのでいつも手洗いしていた。 濡れた手を拭いてリビングに向かうと、ヤマトさんは魚に餌をやっていた。 これまたタイマーの餌やり装置が付いているのだけれども、在宅時は必ず自分であげている。 自分で出来る事はなるべく自分でしたい。 こういう所が私たちは少し似ているのかもしれないと思う。 私もヤマトさんも、文明の利器というものがちょっと苦手な人種なのだ。 「もう怖くないでしょ」 ヤマトさんは視線を魚に向けたまま言った。 「可愛くは思えないですけど」 「それは残念」 正直に感想を述べると、大して残念でもなさそうな声が返ってくる。
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