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前を歩いていた彼が絵馬掛所の前で急に足を止めた。
「で?」
お正月間もないから、まだ絵馬もたくさんそこに掛けられたまま。
それをぼんやりと眺めていく。
つい数日前にも美尋とカラオケ行った帰り道に私一人で立ち寄った。
諦めきれない私は、お年玉の残りで絵馬を買って……。
げっ。
ヤバッ……。
彼の目をそこには行かせないように、と私は立ち位置を少しずつばれないようにと変えていく。
少しずつ。
少しずつ。
それにしても……おかしい。
あの時一番上になんて掛けてないのに。
敢えて二、三個取り出して、私の絵馬はその奥に隠すように掛けたはず。
なのにどうしてそれが一番上にある?
『高橋を諦められますように。
誰か違う人の事、好きになれますように』
お互いの名をフルネームで書かなかったのがせめてもの救い……。
「あのさ、これ。やる」
「え?」
上の空の私に、強引に差し出して来た小さな紙袋。
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