壮大な物語は始まりません(完結)

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 聞いたことのない用語が多すぎて僕の頭はパンク状態だった。でもいろいろなことを知ればもっと楽しくできるはず! と奮起して検索してみたりしたが、すぐに疲れてしまった。キーボードなんてパソコンの授業でしか使ったことがない。 「やっぱアイツおかしいよな」  友人の滑らかなタイピングを思い出し、自分の不器用さを棚に上げて僕は苦笑した。  PC用語をいくつかノートにメモしたところで、楽しみにしていたフリーのRPGとやらをしてみることにした。  ダブルクリックをして、PCの画面が一瞬真っ暗になってから剣を持ったキャラクターと共に「名前を決めてください」という文言が出てきた。 「なまえ、なまえっと……どうするかな」  多分このキャラクターは勇者というやつだ。自分の名前をそのままつけるのも気恥ずかしいので、裕樹(ゆうき)ではなく「キユウ」という名にしてみた。  エンターキーを押すと物語が始まった。  王城にドラゴンがいきなり現れ、王の娘である姫をさらっていく。それを取り戻してほしいと、勇者が呼ばれるというオーソドックスなストーリー。 (こんなの楽しいのかな?)  勇者のお供に魔術師や剣士、回復役の僧侶がつけられた。なんだか魔術師の雰囲気が友人にそっくりで僕は思わず笑ってしまった。  その途端、どういうわけか僕は冷たい床にかしずいていた。 「?」  なんだろうと思い顔を上げようとしたら誰かの手に頭を押さえつけられる。     
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