リディオ・アルボーニ1・夜伽の君は極上の花

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「よろしければ、こちらへお越しくださいませ」 「おう、悪いな」  座った雅の隣りに腰を下ろしたリディオにお猪口を持たせ、雅はそれに酒を注ぐ。それを一気に煽ったリディオを見て、雅は着物の袖で口元を隠して微笑んだ。 「お酒、お強いのですね」 「まぁな。ほれ」 「では、頂きます」  銚子を持って合図すると、雅もお猪口を持つ。それに酒を注げば、薄い唇が透明な日本酒をスッと飲み干していく。 「お前もいける口だな」 「そうでもございませんよ。直ぐに赤くなってしまって、恥ずかしいくらいです」 「いいねぇ、色気がある」  雅の肌が上気して色づくのを想像し、リディオはニヤリと笑みを深めた。 「リディオ様は船に乗っておいでなのですよね?」  酌をしながら、雅はやんわりと問いかけてくる。それに片眉を上げたリディオは頷いた。 「あぁ、そうだ」 「色々な国を巡ってこられたのでしょう?」 「あぁ」 「楽しそうですね」  何気ないその会話に、リディオは雅を見た。そしてふと、思った事を口にした。 「お前は旅行が好きか」 「え? 嫌いではないと思いますが」 「思いますが?」 「あの、あまり経験が」 「その年でか? 海外旅行は」 「いえ、経験はありません」     
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